舞台は薄明るくなり、リハーサルで使っていたお葬式の祭壇が中野渡菓子本舗からのお花の立札、親族一同のお花の立札が飾られていて、どうやら本物の様子です。
舞台をじっくり観察していたところに、泉美が位牌を手に持ち「ただいまー」と帰って来た。
泉美が位牌を祭壇に飾って台所の方へ。そうすると、賢一がお骨を抱えて帰って来た。「ねーちゃーん!」と呼ぶが、反応が無い。
賢一はお骨を祭壇に置くと、台所から「あんた、麦茶飲むよねー?」と泉美。
丸形の折り畳みテーブルを荒げに祭壇の前で準備する賢一。寂しそうに、賢一はそのテーブルに寝そべります。
麦茶を持った泉美が、3個のグラスに麦茶を注いで、テーブルに。
1つは祭壇に供え、1つは賢一に渡し、あごで「うん!」と合図。座布団を要求していたようです。賢一は座布団を泉美に渡し、そこに泉美が座って、麦茶を1杯、「ふぅわー」と一息。
そうすると賢一も真似するように麦茶を1杯、そして「ふぅわー」と。
「真似しないで」って泉美。
またまた泉美は麦茶を1杯、「ブぅわー」と一息。
そうすると、ままたまた賢一も真似するように麦茶を1杯、そして「ブぅわー」と。
麦茶について賢一が「結構、この麦茶美味しいよ」と言うと泉美は「良いって、気を使わなくて」と。
そうしていたところに、昭雄さんが礼服姿でうなだれた感じで登場。手には紙袋を持っています。
昭雄さんが紙袋から、遺影を出しました。なんと弘江さん(真子さん)の遺影でした。
遺影を祭壇に飾り、りん(またはおりん)をカーンと1回、祭壇に向かいがっくり肩を下す昭雄さんでした。
そこに斉藤さんが現れ、「皆様、ご苦労様でした、とても良いお見送りでした。葬儀はこれで以上です」と。
昭雄さん、泉美、賢一の3人で「ありがとうございました」と深くお辞儀をしました。
「こちらの祭壇の方は明日、会社のものが撤収に参ります」と斉藤さん。
「斉藤さんもお疲れ様でした、お茶飲みませんか?」と泉美が呼び止めると「いや、私はこれで」と斉藤さん。
「もう葬儀屋さんは終わりです、お母さんの友達として、、、急に家族だけになると、、、」と帰って欲しくない泉美。
「お茶をどうぞ」と昭雄さんも斉藤さんを呼び止めます。
泉美が麦茶をそれぞれのグラスに注ぎます。
「だけど皆さん、ほんとに立派でした!」と斉藤さんがみんなを褒めると、「いや、これ、これ、これ、これが有りました」とノートを出す昭雄さん。
「ホントにこれ完璧でした」「役割とか何に気を付ければ良いのか具体的に書かれてて」と賢一と泉美。
「すごく勉強してたもんね、弘江さん!」と斉藤さん
「病院で死亡届もらって、火葬許可証まで、ほんと細かくいてたし」「意味不明なアドバイスまで書いて有った。線香は逆立ちした狸のやつを使えとか、グリルプレート代用不可とか」と賢一、泉美。
「あっ、借りてたふくさと切手盆、どこだっけ?」と賢一。
「祭壇のあたりに有るんじゃ無いか?」と昭雄さんは言うが、茶の間のタンスにふくさと切手盆が有り「ありがとうございました」と賢一が斉藤さんに渡しました。
賢一は「斉藤さんが担当してくれて良かった!」と言うと「そりゃあ、他の人には任せられないもんね!」と斉藤さん。
泉美が突然「このためだったんだよね?お母さん、これが分かってたから私たちに練習させたかったんでしょ」と、そうすると「たぶん、そうだったんでしょうね?」と斉藤さん。
「倒れたの、あれから直ぐだったもんね」と泉美
「ところで、どうなったんですか?」とまたまた泉美。
「何が?」と斉藤さんが聞くと「撮ってたビデオはどうなったんですか?」と。
「編集は終わってるの、社内での評判は良かったし」と斉藤さん
「だったら使ってくださいよ」と泉美が言うと賢一が「見せたいの?自分の僧侶姿?」(会場、笑)
「なかなか面白く出来てるのよ、棺から起き上がる昭雄さんを使ったりして、、、出来上がったのを見て葬儀屋では珍しく大笑いだったのよ!」と斉藤さん。
「使ってください!お母さんの頑張ってるところも有るし」と泉美が言うと「じゃあ、そうさせてもらいます」と斉藤さん。
「あなた、今回はちゃんとやってたね」と賢一に向かって泉美が言うと「うそ?」と驚く賢一。
「すごく立派だった、泉美ちゃんも頼もしかったよ!」と斉藤さんと言うと泉美は「厳しい指導のお蔭で」と。
「だけどお父さんは、ほんとダメだったよね、棺桶の前でピーンとしてるだけで、何にも言わないし!」と泉美言うと「よく有ります!特にご夫婦の場合には」と斉藤さん。
お父さんの事を泉美と賢一は「お母さん、あんなに言ってくれてたのに」「口下手にもほどが有るよ!」と言うと「うるさい!」と昭雄さん。
「でも、驚いたのはねえちゃんだよ!」と賢一が言うと「あー言うのは初めてだね」と斉藤さんも。
「お母さんが見たいって言ってたのに見せられなかったから、やばいと思ったけど、あそこで踊らなかったらチャンスが無いじゃない!」と泉美。
賢一は「みんな、固まってたじゃん」と言い斉藤さんは「喜んでたよ、絶対に弘江さんは!」
クスクスと笑っている斉藤さん、賢一に向かって「何よ!ゴンゴンだってあの踊り良かったって言ってたし!」と泉美
「ゴンゴン?」と弘江さんが不思議そうに聞くと「中野渡さん!」と答える泉美。
「チューチューじゃ無かったの?」と賢一が聞くと「まだまだ進化してる」と泉美
「ところで賢一君は?どうなったの?フランスは?」と斉藤さんが聞くと「はい、行きます、卒業して2ケ月準備して、それからフランス。その間は和菓子を父から教えてもらいます、、、母さんがそうしろ!って」と賢一
そうすると昭雄さんは「2ケ月ではどうにもならんけんどな!」と。
斉藤さんが祭壇お前で「家族の心配事まで解決して、、、普通出来ま無いよ、余命宣告受けて、なのに誰にもバレずに」と言うと「ホント、あいつは!」と昭雄さん
斉藤さんも「すごいなぁー!」と、絶賛です。
「使ってください!」と昭雄さんは斉藤さんに座布団を渡すと「ありがとうございます」と斉藤さん
斉藤さんは祭壇に向かって正座しました。
斉藤さんは「なんであんなにニコニコしてたんだろう?すごいなぁー!」と言うと「そういう人だったんですよ」と泉。美
斉藤さんはりん(またはおりん)をカーンと1回、、、手を合わせます。
昭雄さんは「あいつ考えてたんですよ、ずっと全部。賢一のフランス行きの金だって車の買い替えだって、自分の保険で何とかなるのを見込して、、、」と話をすると
ブーブーブーと携帯の音が、、、斉藤さんの携帯が鳴っているようです。
「どうぞ、出て下さい」と昭雄さんが言うと「すいません」と斉藤さんは携帯を出し、祭壇を離れました。
「はい、もしもし、お疲れ様でーす!はい、また故障ですかぁー、それはキャブの問題だと思いますけど。分かりました、すぐ向かいます!」と電話切る斉藤さん。
「私、そろそろ」と斉藤さん。
「なんか有ったんですか?」と賢一が聞くと「会社の車が動かなくなったみたいで、僧侶と葬儀屋が火葬場に残されてるって」と斉藤さん。
「でも、何で斉藤さんが行くの?」と不思議そうな賢一に「私ねー、前にエンジン整備士やってたのよ!ちょっとだったら直せるの」と答える斉藤さん。
「謎すぎる!」と驚く賢一。
「今度、斉藤さんの経歴まとめて教えてもらえますかー?」と泉美がお願いすると「良いけど、何で?」と斉藤さん
「だって、ウェディングプランナー、劇団員、霊媒師、エンジン整備士って、どんな人生だったんですか?」と泉美が聞くと「出版社にもいたし、フラメンコダンサーだった事も有るし、、、落ち着かないのよ!」と斉藤さん
「でも、葬儀屋としての人生を全うするつもり!」と決意を伝える斉藤さん。そすると泉美は「素敵!」と。
斉藤さんは「じゃあ、また寄せてもらいます、お疲れ様でした!」と言うと昭雄さん、泉美、賢一3人揃って「ありがとうございました」と。
斉藤さんは最後に「ヘブンサポートオーシャンのまたのご利用お待ちしております!」と言って去っていきました。「最後のは間違いだよねー?」と賢一の一言。
「葬儀屋が、またのご利用お待ちしております、は無いよね」と泉美も。「これも忘れてるし!」と、ふくさと切手盆を持つ賢一。
「麦茶、新しいの持ってくるね」と麦茶を持ってきて、グラスに注ぐ泉美。
斉藤さんがいなくなり、家族3人になったところで、昭雄さん。
「悪かったな!オレはなにもして来なかった。ずっと考えてたんだ、入院中も葬儀の間もずっと。お前たちと向き合って来なかった。父親として、家族として、人間として。全て母さんに任せきりで、、、お前らはこれからはやりたいようにやって良いから、、、穴に落ちたら、ちゃんと助けるから」と。
泉美は「お父さん、今度ゴンゴンと3人でご飯行こう!」と言ったら賢一も「オレも行く!」「来るの?」と泉美。
賢一は「中野渡さんに話があるしね」と言うと「あんたが?」と泉美。
賢一は「アイデアが有るから」「アイデア?」と不思議がる泉美。
「新しい3色最中の、親父と試したいし?」と賢一が言うと「おおー」と昭雄さん
泉美は祭壇に向かって「お母さん、心配しないで!バラバラになんかならないから!」と言うと「賢一行くよ!2人にしてあげようよ!」と泉美。
昭雄さんに向かって賢一が「ごゆっくり!」と。そうして泉美、賢一は2階へと。
昭雄さんが1人になり、弘江さん(真子さん)に語り掛けます。
「何がちがうんだろうな?お前が入れたお茶と?」
「あのさー、肝心な事言わないのお前の方だろう!倒れるまで一言も何も言わない、辛かったはずなのに笑ってるだけで、、、お前、どこまで強いんだよ!」
「葬式のリハーサル、花入れの時な、オレ、聞いて泣いてたの知ってたか?耳の痛い指摘も有ったけど、ありがとうって言ってくれて、、、それホントはこっちのセリフだよ。ほんとに、ありがとう、、、」
「お前、聞いてたよな?あなたはどうでしたか?って。幸せだったに決まってるじゃないか!お前に出会えて、結婚出来て、家族になれて。」
「おい、弘江、オレはどうしたら良い?やっていけるかな?葬式のリハーサルはしたけどさ、そのあとの事、何にも練習してないよ、お前のいない生活、リハーサルしてないんだよ。だからさー、無理だよ!本番なんて無理だよ!なぁー、言ってくれよ!これも、これもリハーサルだって言ってくれぇー!弘江ー!」
感動のラストです。昭雄さんが遺影を抱え、泣き崩れたところにスポットライトが当たり、最後は真っ暗になり、END。
(会場中、大きな拍手)
最後は、スキップしたくなるような音楽でカーテンコールです。
鈴木福君、羽場さん、真子さん、海荷ちゃん、しゅはまさんが再び登場し、深々とお辞儀をして、真子さんがエスコートを羽場さんにねだり、最後に2人で舞台袖に下がります。
再び現れ、2回目のカーテンコールです。
鈴木福君、羽場さん、真子さん、海荷、しゅはまさんが登場し、深々とお辞儀をして、今度は羽場さんが真子さんをエスコートして舞台袖に下がり、終了。
今回は、アフタートークショーという事で、そのまま席で待機です。
(つづく)