舞台は、賢一がワイシャツ姿でバイト先の店長と電話しているところからスタートです。
「はい、、はい、、、明日は学校が終わってからお願いします。プリンは冷蔵庫に入っています。父さんは微妙ですけど、感想は必ず、、、はい、分かりました、また明日」と電話が終わりました。
そうしたところに、棺桶の中から「ふぁー、ここ結構落ち着く」と泉美が現れ、祭壇に向かって「これどうするの」と賢一。
「さぁね、明日片付けるじゃないの?、、、これ、威圧感有るよね?」と泉美。
「あの葬儀屋の人、大丈夫だったかな?」と賢一、泉美と賢一の会話が続きます。
「斉藤さん?何で?」「だって、ずいぶん落ち込んでたから」「私達が揉めたからじゃないの?」「悪いのは母さんだよね?」
泉美と賢一の事でまだまだ会話が続きます。
「あぁー、何で母さん知ってたんだろう?」「俺たちの事?」「何も言ってないよね?」「言ってないよ!でも、完全に全部ばれてたよね?」「どうやって、知ったんだろう?」
「これは計画的だったんだよ!母さん、俺たちの事をつ伝えるために、葬式のリハーサルやったんだよ!」「じゃあ、斉藤さんもグルだったの?」「違うんじゃない?ビビッてお払いしようとしてたし」
泉美がスマホを見て「あれー、全然既読にならないよ!」と。
「お母さん?」と賢一が聞いたら「チューチュー」と泉美。
「えっ?チューチュー?」「中野渡さんの事だよ」「何で、チューチュー?」「中野渡修二って名前だから、チューチュー」「何で?チューシューじゃやないの?」「そこから進化したのよ」「進化の意味が分からない!」「チューチューの方が呼びやすいでしょ!」「理由はそれだけ?」「カンガルーには何で袋がついているの?人間には何で尻尾が無いの?」「進化の法則は不思議でしょ!」と泉美と賢一の会話がまだまだ続きます。
「あー、取り合えず、お父さんにバレたって連絡したのに、、、」と泉美。
「そっちは大丈夫なの?」と泉美が賢一に問いかけると「卒業したらフランス行くだけだから」と。
「あなたの場合はお父さんの許しが必要でしょう!、お金の事だって有るしね」と泉美が賢一に言うと「それは、母さんがくれるって言ってたし」と。
「あなたの場合はちゃんと話をしないと駄目でしょう」「お姉ちゃんは味方してくれんでしょう?」「するよ、反対されても味方するし、、、だけど、ちゃんと話さないと」
「それは店長からもちゃんと両親の了解を取りなさいって!言われてる、そしたら店長が説明するって」と賢一。「全うな意見だね」と泉美。
「今日は良い機会だったのかもね?」と賢一が言うと、泉美も「うーん、そーだね!」と。
「ところで、ケーキ食べる?」と賢一が泉美に言うと「急に何?」と。「今日、バイトで作ったんだ、家族に食べてもらって、感想をもらって来いって!」「食べたい!」と泉美。「じゃあ、持ってくる」と賢一は言って台所へ。
「でも、お母さん遅くない?電話有ったんだよね?いつもの焼き鳥屋から?」「白装束で焼き鳥屋に行くなんて、マジでやばいよ!ほんと無理、あんなお父さん、こんな家は出ていくから関係ないけどね。」
賢一が台所から戻って来て「1個しかない!?、3個有ったのに」と困った様子。「お母さんと斉藤さんとで食べたんでしょう?」と泉美。
そこに「ただいまー」と弘江さん(真子さん)が帰って来ました。
「大丈夫だったの?」と泉美。
「うーん、まだそんな格好してるの?早く着替えて来なさいよ!」
「お父さんは、どうしたの?」と泉美が聞くと「わらじ脱いでる」と弘江さん(真子さん)。
「何が有ったの?」と泉美が聞くと「泉美には言いにくいんだけど、中野渡さんと揉めたのよ、ケンカ!お父さんが呼び出して、そこでお店の人が止めてくれたから良かったけど、それでお店から電話が有って」
泉美は扉を開け外に向かって「なんで、チューチューに怒るの?チューチューじゃ無くて私に怒れば良いでしょ!」「チューチューって中野渡さんの事?」と弘江さん(真子さん)
「人の娘に手を出しやがって、親として当然だろう!」と外で大声で昭雄さん。
「何なのよ!私、ちゃんとした大人なんだけど?、マジで信じられない!サイテー!」と怒る泉美。
「そうだよ、サイテーだよ!」と賢一が追い打ち「何だよ、賢一まで?」と昭雄さん。
「サイテーって言ったら、サイテーだよ」と更に追い打ちをかける賢一。
泉美が階段を上りながら電話で「もしもし、チューチュー?今聞いた、大丈夫?」と。
昭雄さんが帰って来て「フランスだか何だかしらないけど、オレは絶対許さないからな!」「何で?」と賢一が食って掛かる。
「さてと、これを片付け無いとね?」と弘江さん(真子さん)が間に入ろうとするが、、、
「父さんの許しなんかいらないよ、オレは行くからね!」と賢一
「お前はまだ高校生だろう?バイト先で何を言われたか分からないけど、そんなに甘いものじゃないんだ!」と昭雄さん。
「ケーキなのにね?」と賢一
昭雄さんと賢一の言い合いが続きます。
「今はとにかく大学に行け!命令だ!」「嫌だ!聞かないよ!」「ケーキ職人になんて簡単になれるものじゃ無い!」「パティシエだよ!」「なにー?」「じゃあ、父さんは?和菓子職人目指したんでしょう?同じじゃん!」「時代が違うんだよ、オレは大学に行かせてもらえなかった。おまえは恵まれてるのが分かって無い。毎日毎日和菓子作るのは楽しい事だけじゃないんだ。お前がバイト先で遊んでるのと違うんだ!」「三食最中ばっかり作ってるからだろう、昔はいろいろやってたのに。だけど、今は中野渡さんから頼まれた三食最中を作ってるだけだから、つまらないよね?」「何だ?親に向かってその口の聞き方は!?」
電話中だった泉美が慌てて降りて来て、昭雄さんと泉美の言い合いに。
「ちょっと何なの?お父さん!今、賢一に手を上げようとしてたよね?お母さん!お父さんが賢一に手を上げようとしてたよ」「違うって!違うって言ってるだろう?」「すぐ気に入らないと頭ごなしに怒鳴るだけじゃん!」「心配して言ってるんだろう?!」「何がダメなの?賢一がフランスに行っても?自分の考えを押し付けてるだけだよ!」「オレは父親だぞ!」「私たちはそうは思っていないよ」
賢一も加勢します。
「そうだよ、姉ちゃんの結婚は何も聞かないで、ダメとしか言わないし」「そんなに言う事聞けないんだったら出ていけー!」と怒る昭雄さん。
「結婚したら言われなくても出てくから」「そうだよ、オレも勝手にフランス行くから」「もういい!二人ともさっさと出ていけー!」とますます怒る昭雄さん。
たまらず、弘江さん(真子さん)が仏壇に有るりん(またはおりん)をカンカンカンカンカン・・・と鳴らし「いい加減にして!落ち着いて話して!」とこの争い止めます。
「弘江、なぜ教えてくれなかったんだ?」と聞いてくる昭雄さんに弘江さん(真子さん)「何が?」ととぼけます。
「賢一のフランス行きとか、泉美の結婚の話とか、全部知ってたのか?」と昭雄さんが聞くと「だいたいはね」と弘江さん(真子さん)。
「何で知ってんのー?」と泉美が聞くと「何でって言われてもねー」と弘江さん(真子さん)
「絶対に誰にもバレないようにしてたのつもりなのに!」と泉美が言うと「オレも!姉ちゃんにしか言ってなかったのに!」と賢一。
「それはー、、、親だからかな?あんた達の事見てるからね」と弘江さん(真子さん)
「知ってたのなら言って欲しかった。そしたら、やりようが有っただろう?」と昭雄さん
「やりようって何?」と弘江さん(真子さん)が聞くと「相談が出来るだろうー?」と昭雄さん
「一切、話なんかしなかったのに?、、、同じ屋根の下に住んでいて、一切話ししなかっらのにー!?」と弘江さん(真子さん)
「そりゃ、あたしだって、あなたに相談したかったわよ、一人で抱えてるのもいろいろ苦しいし、だけど話したらそれで終わるでしょう。話し合いなんて一切せず、子供たちの言うように、頭ごなしに反対して終わりでしょ!」と弘江さん(真子さん)
「おまえは賛成なのか?」と昭雄さんが聞くと「賛成も反対も無いよ、ただただ心配なだけよ、フランス行ったってパティシエになれるとは限らないし、30歳も年上の人との結婚はいろいろと辛い事も有るだろうし、、、親は子供心配するの!穴が有ったら子供たちが落ちないよう守りたい。でも、この子達の人生じゃない?穴に落ちた時は助けてやるのが親じゃ無いの?あなた!あなたはこの子達の事、ちっとも分かって無い!」
「泉美が変なダンスしてたの知ってましたか?」と昭雄さんに弘江さん(真子さん)
「変なダンスって?」と昭雄さん
「コンテンポラリダンスです!」と泉美。
「しかも、そんなじゃないよ!高校の頃から始めてたの。いろんなイベントに出てたのあなたは知ってた?そのイベントで中野渡さん、チューチューと出会ったの、そうでしょ?」
「何で、その事知ってるの?」と泉美が聞くと「見てたら分かるよ」と弘江さん(真子さん)
「賢一、ケーキすっごく美味しかったって!お父さんが」と弘江さん(真子さん)
賢一と昭雄さんは驚いた顔して「えっ?」と。
「賢一がいろんなケーキ屋さん行って食べてた事、知ってた?いろんなケーキ食べすぎちゃって太ったからって急に腹筋始めた事?賢一の小学校の文集、将来はあなたが和菓子屋で自分はとなりでケーキ屋をやるって書いてた事」
弘江さん(真子さん)はケーキを一口、口に入れ「うーん、これすごく美味しい!」と。
「偉いと思うなぁー。2人ともちーゃんと頑張ってるんだもん。立派に育ったなぁーって、嬉しく思う。もっと向き合って欲しい、子供たちと!」と昭雄さんに言う弘江さん(真子さん)
今度は、泉美、賢一に向かって
「あなた達もよー!」「あなた達、お父さんの事、何も分かって無い?お父さんが何で3色最中を作り続けてるか知ってる?何でチューチューから原材料費を落としてくれと言われても頑なに作り方を変えないかあなた達知ってますか?」と弘江さん(真子さん)
「何で?」と賢一。
「昔、京都に家族旅行に行った時、覚えてる?」
「私が小学6年の時だよね」と泉美。
「その時、老舗の和菓子屋さんに立ち寄った時、お菓子とお茶をいただいて、そしたら賢一がお父さんの作った三色最中の方が美味しい!って、お店の人に言ったの。賢一は小さかったし、お店の人も笑って聞き流してくれてね、お父さんも、和菓子やってるもんですから、って話して、向こうの余裕を感じたのかな?泉美が急に、本当にお父さんのお菓子の方が美味しいんです!ってムキになって」
「ホントに?全然覚えて無い」と泉美。
「お父さんは困ってたけど、嬉しそうだった、、、旅行から帰った後、あいつらは本物が分かるんだ、頑固にやってるから良いんだ、ってはしゃいじゃって。だから、お父さん、変えたくないのよ。知らなかったでしょ!」
「あっホント美味しかった、どうぞ!」と弘江さん(真子さん)はプリンを泉美に渡す。
「もともと私の分なんだけど」と泉美。
「だって私食べて無いんだもん、美香ちゃんに出しちゃったから、賢一、ご馳走様」と弘江さん(真子さん)
「久しぶりに、泉美のダンス見てみたいな、ここでやってよ!」と弘江さん(真子さん)
「何でー?絶対に嫌!こんなところで。半年後に発表会有るから、それを見に来て!」と泉美。
「そっかー?そうだね、そうするかぁー?」と弘江さん(真子さん)
「おい、弘江、おまえ何だよー?」と昭雄さんが何か感じたのか「なに?」と弘江さんが聞いたら「いやー」と昭雄さん。
「とにかく、仲良くやって、家族仲良くしてたら何とかなるから、、、」とマッサージチェアーにすわりマッサージを始める弘江さん(真子さん)
弘江さん(真子さん)にスポットライトが当たり「あー、気持ちいいー」と、、、舞台は暗くなり、最後のクライマックスへと。
(つづく)